共有者が居住中の共有不動産も共有持分を売却できる?

公開日:2020/06/01  最終更新日:2020/06/04

共有持分売却の中で特にトラブルとなりやすいのが、共有者が居住している物件です。誰も住んでいない、もしくは住居が存在せず土地だけの状態であれば自分の所有分のみの共有持分売却はさほど困難ではありません。ここでは共有持分売却を行いたい物件に共有者が住んでいるケースにおいて、明け渡し請求や家賃請求の可否、具体的な解決方法について解説します。

原則的には住んでいる物件の共有持分売却は可能

民法252条によれば、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できるとあります。共有不動産に権利者が居住していても、原則として共有持分の部分の分割請求は可能であるため、居住者のいる不動産の共有持分売却も可能となります。

しかし注意点として、共有不動産を実際に利用している人がいる場合において、不動産評価が下がる可能性があります。加えて、分割請求ができないケースがあるという点も注意が必要です。

冒頭で述べた通り分割請求および売却は可能ですが、あくまで原則としてという前提がつきます。共有物の分割請求を行う権利は共有者に与えられているものの、その権利を行使すれば権利の濫用として咎められる場合もあるということです。

権利の行使が認められないのは、成年後見人への分割請求です。分割請求によって住居を失い、生活費や医療費を支払えなくなる恐れがある場合において、裁判所によって分割請求を取り下げられた事例もあります。

また別居中の夫が、妻に対して同様の請求を行った判例に関しても取り下げとなったことがあります。いずれも客観的に見て、分割請求が成立した後に両者の損益に不平等がないかを裁判所が審査した上での判例です。

さらには、同じように妻だけでなく子に対しても権利の行使が認められないケースがあります。共有者が住んでいる物件の共有持分売却は、権利の濫用とならない範囲で可能ということを覚えておきましょう。

物件の明け渡し請求や家賃の請求に関して

共有不動産をできる限り高額で売却するためには、共有状態のままよりも不動産全体を売却する方が高い価格がつきやすいです。ただし共有物の全体を売却する場合は他の共有者の同意が必須であり、既に共有者が利用している状態であれば同意を得るのは特に困難となります。

その場合は先述の分割請求の他に、明け渡し請求を利用する方も多いかもしれません。しかし明け渡し請求は不法占拠の場合に有効な方法であり、共有物への適用は難しいでしょう。居住している人は共有者の1人であるため、不法占拠にはあたらず明け渡し請求も原則的に認められないということです。

一方で、共有者に買い取ってもらうことはできます。使っている1人が他の共有持分を買い取って、単独所有という形にすれば法的にもきれいにおさまります。お互いに話し合って価格を決め、合意に至れば売買契約が成立するという流れです。しかし共有持分の価格の希望が一致せず、売買契約が成立しないという事例が圧倒的に多いです。

ここで注意点として挙げられるのは、買い取りはあくまで合意の上であること、お互いに希望を伝えることはできても買い取りを請求する権利はないということでしょう。

なお家賃の請求に関しては、認められることがあります。建物を使う対価である家賃を共有持分の割合に応じた額として請求するという考えが最高裁でも認められているからです。誰かが住んでいる状態であれば、その共有者の1人が不動産を独占している状態とも言えるため、他の共有者は賃料相当額の請求が可能という訳です。

話し合いがこじれたら共有物分割請求

問題を解決する上でとられる対処法として、共有物分割請求と呼ばれる制度が採用されることが多いです。

住居に住んでいる人か他の権利者が物件全てを買い取る、住人が家賃の支払いに応じるといった方法では解決できなかった場合、多くは話し合いでは解決できません。これより先の段階としては訴訟となり、裁判所が取り扱うこととなります。 端的に言うなら、裁判所が介入して強制的に共有状態を解消するということです。

共有の解消法は合計3種類存在しており、その中から選ぶことができます。共有者の1人が長年住んでいる場合においては、最終的にその住人が買い取るケースが多いです。ただし住宅ローンや担保など抵当権が付いている場合、問題が非常に複雑化します。

一方、共有者全員の同意が得られた場合においては、基本的に全員がそれぞれ売買契約を行います。せっかく話がまとまったのだから1人でまとめて行いたい、という場合には代表者を決めなければなりません。他の権利者の同意があるという委任状を作成した上で、共有者における代表者が売買契約を結ぶという形です。

売却の際に得たお金や、売却において発生した諸費用については共有持分の割合に応じて分割することになります。これは委任状を用いて代表者が売買契約をかわした際も、個別で契約を結んだ際も同様です。ちなみに委任状に関しては、特に厳密な決まりは定められていません。

 

住居に住んでいる人が居ても、共有持分売却は原則的には可能です。しかし売却後の住人の生活が保証されることが条件であり、基本的には住人を含む他の権利者の同意なしに売却に踏み切るのは難しいです。まずは話し合いを経て、共有者の同意を得るように話を進めるのが得策となります。

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